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1992年に設立、中南米の支援と情報発信を続けています。主な活動は会報誌「そんりさ」の発行や、グァテマラ基金によるグァテマラ共和国の女性団体支援などです。詳しくはHPをご覧ください。

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ハイチ地震 侵略のための無秩序戦略 翻訳

2010-02-05 16:55  カテゴリ: レコム 
■ハイチ地震 侵略のための無秩序戦略 ホセ・ルイス・ビバス

 1月12日にポルトープランスを襲った地震は、ハイチへの幾度目かの軍事的侵出と占領を正当化する格好の口実を提供した。ハイチは2004年からすでに占領されていたが、今や、どのような仲介もなしに主要勢力によって直接占領されることになった。占領の政治的戦略的な動機には事欠かない。同時に、現在の占領の主要な仲介勢力であるブラジルを牽制することにも役立つだろう。というのは、ブラジルは、ハイチで良い活動をしているが、ホンジュラスのクーデターの時のようには動いていないからだ。
 現時点までに我々が目にした諸事実は、人道目的ではない新たな軍事占領を米国が準備しているのではないかという懸念を裏付けているようだ。現在の占領者である国連ハイチ安定化派遣団、とりわけ軍事的指揮権をもつブラジルとの摩擦、人道支援の麻痺と無秩序状態の助長、無秩序と暴力のイメージをつくりあげ占領を正当化する世論をもたらすメディアキャンペーン……といったさまざまな要素が、そのことを示している。以下で見るように、これらの懸念を裏付ける要因はすべて存在しているようだ。
 ハイチの人権状況の悪化を意図的に容認していると疑う根拠は存在する。たとえば、メディアで広く報じられた救出活動における調整の欠如である。本来、調整の役割は国連が担うべきだが、米国によってその役割を担う権限を奪われているようにみえる。米国は当初から、救出活動の調整をする重要拠点のひとつである空港をおさえている。国連のリーダーシップがなく、ハイチが「失敗国家」あるいは(オーウェル的な言い方を避けるならば)「すでに破綻している国家」である現状では、ほかに有効な救援活動を指揮する者はいない。国際的な基金を受け、ハイチ政府がすべき役割の多くを担ってきたNGOも、指導・調整の役割を果たせていない。本来政府が担うべきそうした責任をNGOに求めるべくもないだろう。
 また、軍派遣の素早さと比較すると、米国の援助の遅さは際だっている。遠く離れた中国からの援助でさえ、米国からよりも早く到着したようだ。2005年のハリケーン・カトリーナ後の救出活動に参加した、米陸軍の退役中将ラッセル・ホーナーは、今回の地震後のハイチの状況について次のように語った。「カトリーナを通して我々はすでに教訓を得ている。水と食糧を運び、人々を避難させ……。もっと素早く行動するべきだったと思う」。たとえば、米陸軍がきわめてすばやく動員された一方で、海軍の病院船の準備は悠長に見えた。「鈍足で老朽化した船で、準備が完了してから到着までに1週間はかかるだろう」とペンタゴンのスポークスマンは語った。おそらく、老朽船ではこれ以上のことはできないのたろう。だが、迅速に援助する他の方法があったはずだ。たとえば、国防総省の元補佐官ローレンス・コーブの、人命救助においてキューバの知識を活用するべきだという異端的な提案を採用することもできた。「まず立ち止まり、隣国キューバには世界でもトップクラスの医者が多いことを考慮するべきである……彼らを我々の飛行機で運ぶよう試みるべきだ」と彼は主張している。
上記のような事実は、米国政府にとって人命救助の優先度がひいき目に見ても低いのではないかという印象を我々に与える。純軍事的分野で、「フォートブラッグ陸軍基地の第82空挺師団の3500人」(クリスチャン・サイエンス・モニター紙によると)の任務も「不透明なまま」派遣したのと比べると明らかである。しかし、米国務省のスポークスマン、フィリップ・クロウリーの以下の説明のほうが、よりわかりやすいだろう。「我々はハイチを占領しているわけではない。国を安定させ、人命救助のための物資や人材を供給することを援助しているのであり、ハイチを再建するため長期間滞在することになるだろう」。また、ヒラリー・クリントン国務長官は、北米の軍隊はハイチに「きょう、あす、近い将来」に滞在しつづけるだろうと発言している。
 ハイチの国連軍指揮下にある他の諸国、とくにブラジルとの外交摩擦はまもなく表面化し、米国のハイチにおける「使命」は、純粋な人道支援とかけ離れたものになっていることを示した。これまでブラジルは、ハイチで割り当てられた役割を真剣に果たしてきた。ブラジル軍は、ハイチの民衆、とりわけ貧しい人々をコントロールし、ブラジルのファベーラ(スラム)でお手のものの暴力的ややり方で恐れさせることも度々だった。「自由ハイチ」の記者キム・イーブがあるインタビューで報じているように、ブラジル人主導のハイチのいわゆる国連平和ミッションは「(ハイチ人には)極めて印象が悪い。人々は、自分たちの上に巨額の金が使われ、ブラジルの兵士が巨大な戦車に乗っていたるところを走り回り、その銃口を彼らに向けるのを見ることにうんざりしている。ご存知のように、ハイチという国を屈服させることを目的とする軍隊なのだ」
 米国の第一の目的が、ハイチでの軍事的役割を担うことならば、ブラジルと対立するおそれもあった。実際、争いが起きるまでに時間はかからなかった。国連事務総長バン・キムンは1月14日、「すべての勢力が国連ハイチ安定化派遣団の指揮のもとで協力することが望ましい」と述べた。だが、米国はこの提案を受け入れなかった。米政府の関係者は、米軍は国連の指揮と「調整」はするがそれ以上ではないと語り、クロウリーは「米国政府の命令のもとで活動し、ハイチ政府とハイチ人民の名において、国連のミッションを援助する」と表明している。
 この「調整」がどのようなものかは、ブラジルのネルソン・ジョビン国防大臣の反発を見ればわかるだろう。彼は米国によるポルトープランス空港の支配を「一方的だ」と批判する。彼によれば、他の諸国との相談もなしに空港を支配下に置き、貨物や人員を輸送するブラジル空軍機の着陸を妨げかねない。ブラジルの新聞フォーリャ・デ・サンパウロ紙が指摘するように、この状況は「ブラジルと米国の間に小さな外交問題をもたらした。ブラジル空軍機の着陸を妨げているのに加え、米国のコントロールは、MINUSTAH(ブラジル人が主導する国連安定化派遣団)の空港への着陸も妨害していると、ブラジル側は批判している」。
 後に発表された、「米軍は人道的な役割を第一にしており、治安には干渉しない」というヒラリー・クリントンのジョビンに対する声明にもかかわらず、そうした「人道的」活動は、「政府の文民組織によって指揮されるのではなく……ペンタゴンに指揮され」、アメリカ南方軍(SOUTHCOM)を通して「軍事作戦を展開し、米国の戦略目的を達成するための治安維持の共同行動を進めること」が役割である--と、グローバルリサーチ紙のミシェル=チョスドフスキーは指摘している。
 もうひとつ重要な要素は、ハイチの「無秩序状態」が道具として利用されているのではないか、ということだ。またおそらく人道支援物資の分配を意図的に調整しないことも、この「無秩序状態」をつくりだす一因となったかもしれない。その目的は、無秩序と暴力の蔓延というイメージをつくりだし、侵略を世論の前で正当化することであり、そのために、巨大情報メディア間の緊密な協力が必要になる。少なくとも米国政府に近いメディアは、疑問を挟むような時間の無駄はしない。当初から、状況を劇的に見せようとしてきた。たとえばポルトープランスではだれも銃声を聞いていないのに銃撃戦の機銃掃射があったといううわさを広め、新たな犯罪グループが結成されたという話も広めた。このようにして地震の2日後には、「混沌のハイチを犯罪組織が支配か」と題する記事を読むことができた。以下がその嫌悪すべき記事である。「地震で破壊されたポルトープランスを夜の帳が包むころ、住民たちは、銃声を聞いたと語った。これは驚くべきことではない。ハイチでは、自然災害だろうと政治だろうと緊急事態下では、夜間は武装グループが路上を支配し、犬の遠吠えと同様、銃声は珍しくもなんともない」。だれも銃声を聞いたことがなく、路上を闊歩する犯罪者を見たこともない以上、「無秩序」という偽りのイメージをつくりだし、侵略と占領を受け入れやすくすることがこれらの記事の目的だと指摘し得るだろう。
 大半のメディアは今、無秩序と暴力というイメージを執拗にくり返している。しかし例外もある。たとえばカナダハイチ活動ネットワークのコーディネーター、ロジャー・アニスは、偽りの暴力を放映しないBBCのルポルタージュに言及し、「CNNなどのニュース番組に充満する略奪と暴力という警告と、強烈なコントラストをなしている」と評する。彼はまた、「このようなイメージは米国の国防総省のロバート・ゲイツ国防長官によって再生産されている」と言う。支援物資を空から投下しない理由についてメディアに尋ねられたゲイツは、「空からの投下は混乱をもたらすだけだと思う」と言う。物資の投下による混乱は、物資が被災者に届かないことよりも悪いとゲイツは見ているのである。
 最も不気味なのは、それまで存在していなかったような「無秩序と暴力」をもたらそうとする周到な悪意によって、被災者支援が届いていないのではないかということだ。ロジャー・アニスによると、「3日前の破滅的な地震の後で、ハイチ民衆に対する大規模なサボタージュとしか思えない事例が増えつつある。重要な薬品や食糧、水を浄化する化学薬品、車両などの備蓄がポルトープランス空港に山積みにされ、メディアが、緊急援助をするための国際的な努力を伝えるにつれて、破壊された都市の住民は、いつになったら何らかの援助を目にすることができるのかと自問しつづけている」という。
 BBCレポーター、アンディ・ガラガーは、1月15日の金曜日に首都のあらゆる場所を歩き、「礼儀正しいハイチ人にしか出会わなかった。行く先々で住民に案内され、そこでなにが起きたのか、彼らの家や生活がどうなったのかを見せてもらった。そして、『どこに援助があるの?』と何度も質問された」。援助の分配を妨害することになっている米国国防長官による「安全」のために支援物資を分配しないとする声明についてガラガーは「そうした(危険な)事態はいっさい見ていない」と語った。空港の状況については「地べたに大量の物資が山積みにされ、多くの人間もそこにいる。分配にどんな問題があるのか私にはわからない」と報告する。同様に、ある現地住民の観察によると、「メディアのスタッフは、ヒステリックに行動する絶望的なハイチ人の物語をさがしている。実際には大半の人々が落ち着いて行動しているのに、国際社会やエリート、政治家は集団ヒステリーのことしか考えられず、実際の状況がどうであるかは目に入らないようだ」
 米国は、キューバ人医師をハイチにつれて来ようとしないだけでなく、30人のキューバ人医師が1年前からハイチにいる約300人の医師と合流するために到着した直後、米軍は空港を占拠した。 多くの人は、なにかが空港占拠の背景にあると疑っている。たとえばトリニダ・トバゴ・エクスプレス紙は「各国元首や高級官僚を含むカリブ共同体の緊急援助ミッションは金曜日、破壊された国の、米国の管理下にある空港に着陸することを許可されなかった」と報じ、「米国がキューバとベネズエラからの飛行機を着陸させたくなかったので、カリブ共同体のミッションの着陸も許さなかったのではないかと質問されたジャマイカのゴールディング首相は、『ハイチのすさまじい悲劇を前にして、そのような幼稚な思考が本当でないことを願いたい』と答えた」と書いている。
 次の証言者、ジャクメル映画協会のデイビッド・ベルも、メディアによって広められた無秩序と暴力のイメージに強く反論する。「多くの北米メディアは、ハイチを爆発寸前の火薬庫であるかのように描いており、大メディアの主要なルポルタージュは、暴力と無秩序についてしか報道しない、と多くの人が不満を言っていた。これほど現実からかけ離れたことはない……私はただの一度も襲撃や暴力を見たことがない。逆に、隣近所同士、友人同士、他人同士が助け合うのを見てきたし、生存者を見つけるため、素手でがれきを掘り起こすのを見てきた。伝統医療でけが人を治療する人や、集団埋葬の厳粛な儀式、焼け付くような太陽の下、わずかに残された持ち物を手にしてじっと待ちつづける住民も見てきた。200万人が援助物資や薬品、食糧、水を待ちつづけるズタズタにされた都市。大半の人は、いまだに援助を手にしていない。だがハイチは、生き残った人々を誇るべきである。この悲劇的な状況で示された彼らの尊厳と品位はそれ自身、驚嘆するべきものである」
 ここまで紹介したすべての要素が、侵略と占領を正当化するための不気味な「無秩序(混沌)戦略」が存在するのではないかという疑念を裏書きしており、それは人道的とはほど遠いものである。

出展 ALAI, America Latina en Movimiento http://www.alainet.org/active/35579(2010-01-18)
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